1. ベターホームライフをめざして

 入所者の85%は女性。その女性の平均年齢は85歳に近づいている。介護度Wに限りなく近い自由度平均。寝たきり/車椅子/杖歩行、それぞれ3分の1の生活スタイル。加齢に従って増すボケ症状。特別養護老人ホームの入所者の健康は、次第に重篤になっていく。いま、病院に入院している園の老人は、入所者の10〜13%になっている。施設の懸命の看護・介護にもかかわらず、次第に介護の難しさが増しているというのが、わたしの実感である。
 A先生が、老人医療の先駆者として、特別養護老人施設の運営に携わられたとき、お年寄りが静かに暮らす環境を整えたいと、考えられたことが、当を得ていると、私は思うようになった。かつての施設は、老人の共同生活の場、つまり大きなホームであった。だから、職員は寮母とよばれた。今はちがう。介護士が老人のお世話をし、看護師が医療域を支える老人ホームになろうとしている。施設は、老いを養い、余生を生きるための、小さい奥まったターミナルになろうとしている。介護士は老練で経験豊かな、包容力のある人、人生相談役になれるぐらいの人が望ましい。家庭でできない介護をお引き受けする高度な専門技術を持った介護士が欲しい。
 現場は、きつい、汚い、危険な3K職場だ。お年寄りに対する優しさを持っていないと、献身的な介護を続けることが出来ない。また勉強しようという意欲をも維持できないと思う。園には、献身的に老人のお世話ができる職員がたくさんいる。老人を預けている家族と協力して、園のお年寄りの余生を見守ってあげてほしい。