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22. 薬の処方が安易に過ぎてはいないか
医療関係者は、服用者のことを考えて処方して
「園長、代わりに飲んで」と朝食のとき、食卓に小山のように積んだ薬を前に、男性は私に向かって、冗談ぽく話しかけてきた。その薬の数は15種だそうだ。嘘のような本当の話である。「あなたは15種の薬を、朝ご飯の後、口に入れるこができますか。あなたはきっとうまく飲めないだろう」という表情をしながら、薬処方のいい加減さを訴えていた。その男性は、厳冬の暖かい部屋で、朝食を済ませた後、とんでもないデザートを苦しみながら、喉に流し込んでいた。職員に聞くと、この間まで、18種もの薬だったそうだ。それを、わが施設の嘱託医が、3種減らしてくれたのだそうだ。嘱託医は、きっともっと減らしたいのだと思う。何で、こんなことになってしまったのだろう。
彼は、緊急避難的に、市福祉事務所と、市の介護保険係りの世話で、施設に回ってきた人だった。この寒い季節に、路上生活していたものだから、いき倒れたときに、その都度、健康診断と薬の処方を受けたものらしい。つまり、複数の医療機関から、相互の薬チェックも受けずに処方してもらったらしい。木を見て森を見ないような緊急の医療手当てを重ねた結果、こんな患者泣かせの医療になってしまったのだろう。面倒を見てくれている福祉事務所に対して、この義理堅い男性は、苦しみながら、懸命に薬デザートを口に入れていた。
ナースセンターの与薬予定表を見たところ、彼の昼食や夜食のときは、15種を飲むことには、なっていなかった。看護長の意見では、薬が多すぎる、ということであった。わたしも、その意見は正しいと思う。
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