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24. 看護長の信念
「究極のお世話です」、ターミナルケアは通常ケアの延長線上に
うちの看護長がいつも言う言葉は「施設の看護師は優しさが必要」である。私は、看護長を「リトッル ナイチンゲール」と秘かに呼んでいる。本人は、そんなことは…苦笑しながら、仇名を返上してくるだろう。口調は優しくなく、お上手が言えず、攻撃的でさえある彼女。5年あまり、一緒に仕事して、彼女の本質的な優しさを、理解できるようになった。
はじめて接する人は、彼女の良さがわかり難い。職務第一に考えて発言しているから、とにかく煙たい存在である。看護の経験が長いので、指導する点は、的を得ていることが多いと思う。なかなかこの人の言うようにできないので、うるさい、と反発をしている看護師がいる。この人が看護長になったとき、施設を出た後輩もいた。また、就職した看護師が、一週間で離職した例がある。
医師が常駐していない福祉施設では、看護師の守備範囲が広いし、守備につく時間が長い。看護師が要求される緊急処置の技術、病状の観察、看護師としての判断能力など、病院の看護師よりも広い看護域に及ぶ。看護技術に加えて、判断力と体力と精神力とが頑強でないと、施設で長く働くことができないと思う。
余命いくばくもない重篤なご婦人の「もう一度、施設に戻りたい」という願いを聞いた看護長は、「引き受けましょう」といった。病院から療養型専門病院に転院することになっていたのを、病院と交渉して、当施設に引き取ってくれた。この話は、”梅薫る朝 霧に消えるいのち” に紹介しているので、読んでいただきたい。最後まで看護を続ける信念を持った心優しい看護長を、私は支援していきたい。
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