|
|
26. 増える一方の特養待機者 とうとう42万人に
平成20年4月以降の調査(平成21年12月発表)
厚生労働省は「施設整備が進ます深刻だ」と訴えている。介護保険制度が施行されて、平成22年4月で、ちょうど10年となる。既設の社会福祉法人特別養護老人ホームは新しい社会保険に合わせた福祉施設として、老人達の期待を背負ってきた。平成12年度から申し込み順に施設に入居することができた。もちろん、保険機構の介護度認定を受けてからの入所ではあったが。自己負担額が小さいこともあって、入所希望が殺到して、幾年待っても入れないという状態になってしまった。特に、大都市の特養老人ホームは絶対数が足りず、厚労省の計画が根本から揺さぶられる事態となった。作家舛添要一氏が、北九州市在の老母の介護のためにシャットル行動を余儀なくされ、とうとう老人福祉問題の専門家になったことは、私たちがよく知るところである。小泉内閣が平成13年に誕生して、資金力ある企業や医療法人が老人介護サービス事業への参入することが奨められた。特別養護老人ホームの増床には、施設の自己資金と国・地方自治体との分担による投資が必要。地方自治体は人口・世帯数から割り出した老人施設総床計画を持っており、国が旗を振ってもすぐには動けない実情がある。自己資金だけによる新増床施設を厚労省が認めても、経営上の安定を得ることはなかなか難しい。平成18年紙面をにぎ合わせた派遣サービス事業社の老人施設経営からの撤退は、社会問題となった。老人介護施設は介護保険制度を拠りどころにして、保険給付を主たる収入源とし、年中無休、四六時中介護を続ける過酷な労働条件の職場である。私は、3Kの集約労働職場であるといっている。きつい・きたない・きけんを覚悟していないと、永年の勤続はできない。「お正月は出勤したくない」「盆休みは親孝行したいので休む」が通用しない職場。介護士の離職率は、全国平均年15%を上回る。介護施設の給与水準は、他の事業よりもはるかに低く、おまけに3Kの職場だから、介護士、看護師はなかなか施設に来てくれない。特養の有効求人倍率は1.38倍である(平成21年12月)と、新聞は報じた。外国人労働者を採用してでもと、厚労省はやむなく措置を講じているが、抜本解決にはならない。
どうしたら高齢者受難の下降スパイラルから抜け出すことができるか。これからは国民全体が力を合わせて介護の基盤を作るしかない。
- 入所老人の家族は介護を通じて施設に協力する
- 近隣世帯の互助による地域社会を形成する。施設を地域の施設として維持に協力する
- 老人施設は介護技術、看護技術向上のため研鑽に努める
- 施設は雇用職員の雇用条件の改善に務める
- 国は介護士の職域を拡め、その介護技術習得のための教育研修カリキュラムを充実する
これまでのように金を積み上げる発想では福祉の隘路を打開することは難しい。「お年寄りに対する愛情がなくてはこの仕事は続けられない」という看護長の言葉を皆さん噛みしめてほしい。
|
|
|